結果報告

2024年度の取り組み:国際比較研究の進展と運用実装の推進

本科研の3年目となる2024年度は、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシアなど先行する諸国との比較検証を深め、その成果を実践的・国際的に展開しました。

  • オセアニア地域・東南アジア地域における国家制度への組み込み調査
    メルボルン大学のChristopher Ziguras教授らと連携し、各国のガイドラインやフレームワークの運用について比較検証を行いました。ニュージーランド(NZ)は2018年にいち早くMCを国家資格制度に組み込み、NZ資格庁(NZQA)による承認MCの登録簿を整備しており、2022年の時点で多くの大学等から提供されている状況を確認しました。また、マレーシアでは2020年にMQA(マレーシア資格審査機構)が発表したガイドラインに基づくトップダウン型の普及が進んでいます。
  • 国際共同研究による学術的成果「Convergence or fragmentation?」
    オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、そして日本のアジア太平洋エリアにおけるMCについての比較研究の成果をまとめました。これら各国の資格承認に関する最新動向と高等教育への影響を包括的に分析した論文「Convergence or fragmentation? Recent developments in recognition of micro-credentials and their impact on higher education in Asia and the Pacific」を学術誌『Journal of International Cooperation in Education』にて2024年5月に発表し、国際的に高く評価されました。
  • JVキャンパスおよびJMOOCを通じた国内実運用化への直接的貢献
    前年度から継続して作動しているJVキャンパスとJMOOCの共同ワーキンググループでの活動を通じて、日本におけるMCの基本方針やアーキテクチャのガイドラインが正式に策定されました。本研究グループの成果がこのガイドライン整備に直接活かされ、実社会での運用や他機関との相互運用に向けた課題の洗い出しと検証が進むなど、大きな社会的インパクトをもたらす成果に繋がっています。

2023年度の取り組み:共同ワークショップの開催と国内実証に向けた体制整備

2023年度は、各国の高等教育機関や政府機関の事例をもとに、日本国内での実践を踏まえたフレームワークの準備を進め、同時に国際的な交流を促進しました。

  • 文部科学省・ユネスコ共同ワークショップの成果と波及
    関西国際大学を会場として開催されたユネスコ・文部科学省による共同ワークショップ(2022年8月)の成果をもとに、国内外の政策責任者や専門家と協議を重ねました。本科研チームは運営・海外ゲスト招聘として深く協力し、MCが「リスキル・アップスキル」および「非伝統的な学習手段」としてどう活用できるか、各国政府の認識を深める場となりました。
  • 国内ガイドラインとシステム実装に向けたJ-MOOCとの協働
    日本の大学におけるオンライン共同教育システム「JVキャンパス」において設定されたMC専門部会が、「J-MOOC」と共同ワーキンググループを形成しました。本科研チームからも数名のメンバーが中心的に参加し、日本でMCを適切に発行・運用するための国内向けフレームワークおよび運用ガイドラインの整備を行いました。相互運用性の確保や質の担保といった重要な要件に基づき、JVキャンパス上でMC発行が可能となる体制の構築に貢献しました。
  • 国内外の研究成果発信とアジア太平洋規模でのネットワーク形成
    国内でMCを導入するにあたってのガイドライン策定やGood Practiceの設定に向けて、オーストラリアの事例(Microcred Seekerに見られるMCの形態、学習期間、学習成果などの分析)や、マレーシア・タイなど他のアジア諸国での制度的枠組みの調査も並行して進め、学術論文や国際会議での発表へと準備を進めました。

2022年度の取り組み:各国におけるMCの現状・ガイドラインの比較調査

本研究は、多様な学習歴の証明として国際規模で普及が見込まれる「マイクロクレデンシャル(以下、MC)」について、日本およびアジア太平洋地域での運用状況やニーズを詳細に調査し、質保証や相互運用性を伴うMC運用のためのガイドラインを策定することを主な目的として開始されました。

2022年度は以下を中心として研究を進めました。

  • ユネスコやOECDなどとの連携および定義の共有
    2022年、ユネスコは世界中の実用例をもとにMCの定義について報告書をまとめました。またOECDでも高等教育機関における利用状況について調査が進められています。本科研でも専門家や国際機関と連携しながら、学位を必要としない社会人がリスキリング・アップスキリングの手段として自己の能力を証明するためにMCが活用される現状について、その定義や質保証のあり方の把握に努めました。
  • 大学や民間企業によるMC発行の実態把握とスタッカブルな設計
    民間の企業・団体から発行されるMCのほか、複数の大学が連携してMCを発行するケースなど、MCの多様な実態が明らかになりました。特に、カリキュラムとの整合性を保ちながら、積み上げ可能な(Stackable)形式として学習成果を構造的に説明する体系を取る事例が注目されています。
  • オーストラリアにおける先進的な取り組みの調査
    オーストラリアのWestern Sydney Universityなどでヒアリングを実施しました。オーストラリア政府は2021年11月に「マイクロクレデンシャルに関する国家フレームワーク」を公表しています。また、大学などの機関が発行するMCの情報をオンラインで集約・公開し、利用者が容易に検索できる「Microcred Seeker」という全国的なデータベースが構築されていることが分かりました。
  • 日本におけるMC発行システムの基盤構築
    国内の取り組みとして、オンライン教育の公式プラットフォーム「JVキャンパス(Japan Virtual Campus)」内にMCを発行するための専門部会が設定されました。本科研代表者もこの専門部会のメンバーとして参画し、オンラインシステム上での学習成果の証としてMCをビルトイン(連携実装)するための実証的な取り組みを開始しました。

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